今回は、
『戦隊大失格』についてのレビューです。
本作には、
意外にも、「つまらない」という感想も少なくないようですね。
私は、本作について、
高く評価しているのですが、
確かに、若干の”これじゃない感”を覚えたのも事実です。
今回は、
「『戦隊大失格』の”これじゃない感の正体”」を探ってみようと思います。
ちなみに、
私は、本作の原作を読んでおらず、
アニメで楽しませてもらっています。
『戦隊大失格』は、つまらない!?
はじめに、
私は、本作のアニメを割と気に入っています。
しかし、
おそらく、一部の人は、
本作の途中から、以下のようなことを感じたのではないかと思います。
「なんか、思ってたのと違うな・・・つまらないな・・・」
おそらく、
人によっては、
”1話目を見始めた時に期待した展開”と、
”話のふくらみ方”が、
異なる方向に広がっていった、
と感じたのではないでしょうか?
いわゆる”これじゃない感”と呼ばれる感覚です。
ここからは、
この”これじゃない感の正体”を探っていこうと思います。
『戦隊大失格』は、ココがつまらない!?
奇をてらった設定に反し、物語のテーマがベタ!?
まず、本作の設定は、
とても斬新でユニークです。
主人公が、”悪役”でいて、
しかも、”末端戦闘員”だという設定が目新しいですよね。
残念ながら、
レッドキーパーの”悪いヤツ”っぷりは、
amazonのオリジナルドラマ『ザ・ボーイズ』のホームランダーと重なり、
やや既視感を覚えました。
しかし、それを差し引いても、
おそらく、風呂敷の広げ方だけを見れば、
本作は、満点に近い高得点です。
しかし、
その”奇をてらった設定”とは、
裏腹に、”テーマがややベタ”に感じられました。
まだまだ、原作の物語は、進行中だと思いますが、
アニメ版の第1期のまとまりとしては、
テーマが、ベタにまとまりすぎて、
どうにも、がっかり感が否めません。
まず、
大きな期待を抱きながら、観始めた2話目のオープニング映像で、
”とある嫌な違和感”を覚えます。
私は、1話目を見終わった時、
本作の物語を、以下のように勝手に解釈しました。
”孤独な弱者”である・戦闘員Dが、
絶体強者である・ドラゴンキーパーを、
試行錯誤を尽くした末に、どうにか打ち倒す物語。
例えるならば、
私は、本作に、
人気映画『ジョーカー』に代表されるような、
”持たざる者の捨て身の復讐劇”を無意識に期待したのです。
しかし、
オープニング映像には、
”孤独な弱者”であるはずの主人公の仲間であるかのような顔をしたキャラクターたちが、
次々と不敵な笑みを浮かべながら登場します。
ここで、
「えッ、彼らは、本作でどんな役割を担うの!?しかも、この人数!?」
と、少し”嫌な違和感”を覚えます。
そして、
話が、進むにつれ、
”嫌な違和感”は、現実のものとなっていきます。
戦闘員Dが、
大戦隊に潜り込むところまでは、
スリル満点のすばらしい物語展開でした。
しかし、
ここからは、あろうことか、
”孤独な弱者”で、”悪役”であるはずの戦闘員Dは、
大戦隊で立場を同じくする下っ端隊員たちに対し、
仲間意識をもってしまいます。
そして、
戦闘員Dは、新しい仲間たちと共闘し、
自身の昔の上司である”幹部”を打ち倒してしまう始末です。
その過程で、
戦闘員Dは、
少なくとも、私が求めていない方向に思想を磨き、
「仲間たちを大切にすべきだ」という、
正しい心に目覚め始めてしまいます。
要は、本作は、
とてつもなく奇をてらった設定を作り込んでおきながら、
物語のテーマは、「仲間を大切に!」という、
昭和のスポコンドラマのシメのようなベタな展開に、
着地してしまっているのです。
こと、令和の時代に至っては、
そのようなひねりのないテーマを扱う作品は、
小学校の道徳の授業で見る子ども向け番組だけで十分なのです。
今後の物語でも、
戦闘員Dが基本道徳を学ぶ姿を、
ひたすら見せられ続けるのだとしたら、
少しゾッとしてしまいます。
以降のどこかの展開で、
悪者になった桜間日々輝と戦闘員Dの対比構造が描かれる展開などが、
プロットされているようなことがあれば、
それはそれで大きな期待ができそうですが。。。
とりあえず、続きが気になることには、
変わりはありません。
世に出る時代が少し遅すぎた!?
そして、
次に、本作のつまらない点として、挙げたいのは、
「世に出るのが、少し遅すぎたのではないか」という点です。
おそらく、
本作を見る現代の多く若者たちの中には、
”戦闘員・ダスターズたち”と、”自身の境遇”を、
無意識に重ねてしまう人もいるのではないでしょうか?
ダスターズのように個性を殺し、
パワハラまがいの”偉い人たち”にへつらうしかない窮屈な職場での境遇・・・。
これについては、
キタニタツヤさんが手がけたOP主題歌『次回予告』が、
思考停止したサラリーマンを皮肉り、
奮起させるような仕上がりになっていることからも、
製作側がわかりやすく、
そのような”仕掛け”を施しているということなのでしょう。
最近のアニメの主題歌は、
作品の内容やメッセージに合わせて、
恐ろしくしっかりと作り込まれていて感動を覚えます。
旧版の「るろうに剣心」の主題歌『そばかす』の頃からは、
考えられない程、作品の主題歌が大切にされていますね。
さて、話を戻します。
本作には、
”ドラゴンキーパーに従うしかない哀れな戦闘員・ダスターズ”と
”現代の階級社会の被害者である若者たち”を、
無意識に重ねてしまうような仕掛けが施されています。
しかし、幸か不幸か、
ひと昔前に比べて、
昨今は、人手不足の深刻化により、
働き方改革の浸透が加速され、
絵に描いたような”現代の階級社会の被害者である若者たち”は、
かなり数を減らしてきているのも事実なのです。
(参考:内閣人事局>令和3年度働き方改革職員アンケート結果について)
「嫌なら、やめてもいいんだよ。君の代わりはいくらでもいるんだ」
と偉い人が言えた時代は、いつの間にか終わりを告げていたのです。
つまり、
統計的に見れば、
戦闘員・ダスターズたちの境遇を見て、
”回顧”することはできても、
”共感”することはできない人が増えてきているということです。
かく言う私も、その1人です。
すぐれたコンテンツは、
大衆の”共感”によって、生み出されるものです。
そうでなくとも、
本作の主人公である・戦闘員Dは、
思想の変化から、行動に一貫性を欠いており、
心情に共感しづらい部分が多くあります。
ただ、もし、本作が、
コロナ禍の前に放送されていたら・・・
と思うと残念で仕方ありません。
本作は、
踏みつけにされた若者たちに勇気と怒りを思い出させるような、
そんな社会現象を巻き起こすほどの作品になっていたかもしれないとすら、
私には思えるのです。
『戦隊大失格』って作品情報
『戦隊大失格』の基本情報
- 作者: 春場ねぎ
- 連載誌: 『週刊少年マガジン』(講談社)
- 連載開始: 2021年2月3日(同誌10号)
- 現在の巻数: 既刊14巻(2024年5月16日現在)
- アニメ放送期間: 2024年4月7日~6月30日(全12話)
- 第1期OP主題歌: キタニタツヤ「次回予告」
- 第1期ED主題歌: ナナヲアカリ「正解はいらない」:
- 今後のアニメ放送予定:第2シーズン:2025年放送決定
『戦隊大失格』の声優陣
- 戦闘員D:小林裕介
- 桜間日々輝:梶田大嗣
- 錫切夢子:矢野優美華
- レッドキーパー:中村悠一
- ブルーキーパー:井上剛
- イエローキーパー:小野賢章
- グリーンキーパー:鳥海浩輔
- ピンクキーパー:M・A・O
- 朱鷺田隼:吉野裕行
- 藍染小町:長江里加
- 翡翠かのん:和氣あず未
- 撫子益荒男:立木文彦
- 獅音海:小野友樹
- 浦部永玄:山下誠一郎
- 雪野アンジェリカ:鬼頭明里
- 石川宗次郎:濱野大輝
- 明林恋蓮:黒沢ともよ
- 薄久保天使:三上枝織
- 来栖大和:逢坂良太
- 七宝司:清水優譲
- 小熊蘭丸:野津山幸宏
- 戦闘員XX:羊宮妃那